「びんちん」追悼 

びんちん
最後は苦しかったね。何もしてあげられなくてごめんね。
ウチの庭で安らかにおやすみ。

おまえは、ウチの猫になって幸せだったかい?そうであったらうれしいな。
ウチのみんなもおまえのことが大好きで、おまえがいてくれたことで、ウチの中がどんなに穏やかになったか知れないよ。ほんとうにウチに来てくれてありがとう。

先代の「ちび」の影響だと思うけど、最初は「ちびーん」と呼ばれていたね。
「びんてぃん」とも呼ばれていたね。
同じ「ミケ子」の子供だったからか、「ちび」にすごく似てたね。
同じようにしっぽが長くて、同じように白茶のトラ模様で、かっこよくて可愛いかったよ。
天国で「ミケ子」や「ちび」には会えたかい?

野良の小猫の時は、すごく警戒心が強くて、絶対にウチの猫にはならないと思っていたけど、餌につられて少しずつウチの中に入ってきたね。
でも少しの物音でもびくっとして、警戒心が強いのは最後まで直らなかったね。

近所の猫とけんかをしてはケガをしていたね。耳に切れ込みが入ったり、鼻に目立つキズができたり、弱いんだからやめとけばいいのに、そうもいかなかったのかな。最後は陽子さんが他の猫を追っ払ったりしていたね。

他にも書き残しておきたいことがたくさんあるから。まとめてみるね。

 ウチの敷地からほとんど外に出なかったみたいだね。
 昼間は、縁側の箱の中に入って丸くなっていたよね。
 朝は、お隣の畑との境目の木の根本にもよくいたよね。
 夕方、陽子さんが車で帰ってくると真っ先に家の中に入ってきたね。
 良さんが二階から降りてくる時もドアの前でよく待ってたね。
 家の中では、居間の小テーブルの下が定位置だったね。
 無警戒なだらしない姿で寝ていることがあったね。
 小テーブル下から出てくる時は猫のポーズのあと必ず大きなあくびをしたね。
 あくびをする顔は牙のせいで悪魔のようだったよ。
 ダイニングテーブルの下で隠れていることもあったね。
 夏は、畳の部屋の端っこに居ることも多かったね。
 冬は、家の中にいる時間が長かったね。
 家の中では陽子さんのおもちゃになって無理やり両手を動かさせられていたね。
 居間では、陽子さんのそばで一緒にうとうとしていることも多かったね。
 時によっては、陽子さんの上で寝ていたね。

庭にいる時は呼びかけても知らんぷりをしていたね。

ホントにツンデレなんだから。

 チャオチュールとお魚が好きだったね。
 餌を食べたり、水を飲むのはへたくそだったね。
 陽子さんの夕飯の準備中に、「ぴんぴょんぴんぴょん」伸びをして餌をもらっていたね。
 食事が近づくと体とこすりつけてにお

いをつけまくってたね。
 夕食時にはすぐそばにいたのに、テーブルやいすにも登らなかったね。
 伸びをしながら食べるので陽子さんの足によく爪を立てていたね。
 怒られても、8の字に歩いてすぐに戻ってきていたね。
 
 あたり前だけど、体が柔らかくて舌で毛づくろいが上手だったね。
 季節の変わり目にはよく毛が抜けて、陽子さんを嘆かせていたね。
 抜け毛予防でブラッシングをされる時には気持ちよさそうだったね。
 でも撫でようとすると、猫パンチを繰り出してくることもあったね。
 撫でられても気持ちよさそうな時もあって、よくわからなかったよ。
 
 出入りするのは窓からだけだったね。開け閉めが面倒だったよ。
 雨戸も半分しか閉められないままだったよ。
 用を足すのにちょっとだけ庭に出ることがよくあったね。
 窓から出ていく時に小走りする後ろ姿がトラみたいでかっこよかったよ。    
 足の裏を真っ黒にしたままウチに入ってきて陽子さんに呆れられてたね。
 ほかにも枯れ葉や枯草などいろいろ家の中に持ち込んでいたね。
 
 夜中に何度か粗相もしたね。買った砂場には見向きもしなかったね。
 2階にはほとんど来なかったのに、やっぱり粗相はしたね。
 
 猫じゃらしのようなおもちゃに反応したのは、子猫の時だけだったね。

 旅行から帰った時にお前の顔を見たり鳴き声を聞くととてもうれしかったよ。
 名前を読んだら必ず反応してくれたね。うれしかったよ。
 鳴く口真似をしたら、必ず鳴き声で答えてくれたね。うれしかったよ。

本当に本当にウチに来てくれてありがとう。一緒に居られて幸せだったよ。
お前のいない生活は、とてもとても寂しいよ。